リュウさんのレース完走記その4 
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大凧走録(庄和大凧マラソン)2002年5月4日
大凧走録1(直前編)

 会場に着くとすぐにゴンちゃん一家に会えた。子供たちは今日も元気だ。
 かんさん、ピロさん、タイガさんと合流し、それぞれ受付を済ませアップをはじめる。
 「あれ、かんさんがいない…」
 すかさず奥様にきくと、案の上、すでにウォームアップ・ランに出かけてしまったとのこと。先日の幸手のときも、かんさんは大会前に忽然と姿を消した。全速力でコースをぐるりと一周下見しながらアップしているとのデマが流れた。今日もスタートまでまだ1時間はある。「もしかして本当に行っちゃったのかな?」と冗談を言い合いながら、我々もアップに出る。
 ピロさんは、お子さんが熱を出したので帰らねばならぬとレースを棄権した。我々の応援に来てくれるとは、本当に嬉しい。ピロさんの分までがんばろう。(ピロさんの温かさはこれで終わらなかった)
 さて、アップ直後に金髪をなびかせゴルフのキャディのようなでかいサンバイザーをつけながらジョグする女性を前方に発見した。派手なコスチュームにびっくり。前から見て、またびっくり。なんと結構な年配者だったのだ。とにかく度派手。我々は、この上田馬之助(知らないかな?)のような女性をライオン丸と名付けた。この女性が後に我々に意外な驚きをもたらすとは、このとき誰も予想しなかった。
 さて、アップを終え一息ついてスタート地点。まだ、かんさんは現れない。私は、はじめてゴンちゃん、タイガさんと最前列付近に陣取る。皆、いかにもランナーといったスレンダーな人ばかりだ。こりゃ、やばい。前方に西武台高校のチアリーダーがいたので、ゴンちゃんとからかって遊んだ。束の間の休息であった。やがて、かんさんがスーッと現れ、側道で軽くストレッチしたあと最前列に。さすがの余裕ある雰囲気。私はスタート後の自分の姿を想像して身震いした。天空から拝んだら、きっと水流実験のように自分だけ留まる様相でランナーが怒涛のごとく両側から前へ流れていくだろうと考えると、ぞっとした。のちに、その不安は的中するのだが…。
 「出発1分前!」。ゴンちゃんはこの拡声器の「出発」という言葉がどうもしっくりこないようだ。「出発じゃないスタートだ」とスプリンターらしいこだわりの一言。
「10秒前!」の声。一瞬シーンと静まり返る。まさに嵐の前の…といった雰囲気。緊張が走る。やがて「バ〜ン!」とスタートの合図。空砲がバンバンと鳴り、ランナーは一斉に駆け出した。流れに押され、私も早目のペースで前へ進んだ。
 ありゃりゃ。足場に気をとられ目線を下げたわずか数秒のうちに、ゴンちゃんもタイガさんもいなくなっていた。
 うわああああああああああっ…。(レース編へつづく)


大凧走録2(レース編〜前半〜)

 予想通り、スタート直後から早いペースに煽られた。大勢の人に次から次へと抜かれる。冗談抜きで水流実験状態。とてもじゃないけど、ついていけないスピード。「マイペース、マイペース」と自分に言い聞かせるが、それでも影響される。自分がいまどのくらいのペースで走っているのかが全くわからない。なんか嫌な予感。余裕ゼロ状態。足が重い感じだ。(後でわかるが、このとき練習でも走ったことがないスピードだった)
 あれっ?前方にピンクの走り屋ランニングが…。タイガさんではないか。私は目を疑った。そんなはずはない。横に並び、ともに走る。1キロ地点で、時計を見ると4分12秒。前回のさいたまハーフは1キロ地点で5分18秒だったから異常なスピード。練習だってそんなスピードでは走ったことがない。これじゃいかんとペースを落としたにもかかわらず、この結果だ。やはり大会はこわい。レースは興奮するので普段以上の力が出せる反面、平常心も失いやすい。このことを、レース終盤での「失速」という形で、私は体得することになる。
 タイガさんの走りに精彩がない。心なしか呼吸も激しく、表情も辛そうだ。流山の練習会では、私の遥か前をぐんぐん飛ばして消えて行ったタイガさん。そのタイガさんが横で苦しそうにしているのは、見ていて本当に辛かった。「もしかしたら抑えて走っているのかも…。私は行けるところまで行こう。そのうちタイガさんに抜かれるはずだから」。そう考え、私は眼をぎゅっとつぶってタイガさんの前へ走って出ることとした。複雑な心境だった。
 やはり、ペースが速すぎたようだ。5キロぐらいでなんか脚が重い感じがした。給水後もなんとなく苦しい展開。「まだ半分も行っていないのか。早く終わらないかなあ」。今日は弱気だった。あれこれ邪念が駆け巡った。
 7から8キロ地点は給水塔の折り返しコース。距離合わせのためか、コース途中に出べそのように給水塔の往復路が切ってある。ここでは、前方を走るランナーとすれ違った後、折り返して今度は後方のランナーと顔を合わせる。最初にゴンちゃんと挨拶を交わし、折り返す。この時点でカンさんと出会わなかったので、すでにかんさんは折り返しを終えたんだと予測がついた。その後、私は折り返して、タイガさんとすれ違った。私は早くもバテ気味でペースが落ち始めていたが、予想以上にタイガさんとの距離が開いていたのが気がかりだった。
(レース編〜後半〜へつづく)


大凧走録3(レース編〜後半〜)

 さて、出べその折り返しを終え、9キロの表示を越えるとすぐに土手ランだ。土手への上りで脚が重く、両手を大きく振って駆け上がった。突然「リュウさん、がんばれ!」の声を聞く。土手を上り切ったところで、ピロさんが応援してくれたのだ。暑くてバテてボーッとしていただけに本当に嬉しかった。「どうも!」と返事をし、土手を走りはじめる。前を見ると土手上を走る長い長い人の列。ピロさんの声でリフレッシュした私は、再度レースの組み立てをしようと決意する。それにしても、この土手は長かった。気を取りなおしたものの、最初のうちはどんどん抜かれた。ペースはさほど落ちていないのに、次から次へと抜かれ拍子抜けした。ところが、しばらくして脚の重さがスーッと抜け、気持ち良くなった。左後方から吹くそよ風が心地良い。土手ランは中盤から4分50秒ぐらいをキープし、10mぐらい前を走る蛍光色のグリーンのランシャツ男に離されないように走った。
 ようやく土手を降りた。やっとのことで給水を受け残り5キロの勝負へ。ここからが正念場だ。ゴールへ向かうに連れ、向かい風が次第に強くなる。脚も重く感じはじめた。やはり、前半のハイ・ペースがこたえたようで、疲れが早くきた。残り3キロ地点。予定では、ここからラスト・スパートのはずだった。しかし、今日はそれどころか走るのがやっと。スパートどころか、下手したら歩いちゃいそうな辛さだった。この付近では数人が歩き出していた。それを見る度に、「歩いちゃだめだ」「ジョグでもいいから最後まで走ってゴールしよう」と、『腐っても鯛』的なイメージを大切にした。ちょっと走ったところで「残り2キロだ。がんばれ!」と沿道のオヤジのでかい声。ありがたい。泣いても笑ってもあと10分程度、そう自分に言い聞かせ走る。しばらく走ったところで驚いた。「あれっ?」。『あと2km』の看板が出てきたのだ。「しまった、やられた…」。オヤジが2キロと叫んでいた地点は、実際には2.5キロ地点ぐらいであった。ますます向かい風が強くなっていた。 ここでの5百メートルの誤算は溜息だった。もはや、キロ6分ぐらいのスピード、重たい脚。苦痛に顔をしかめながら走る私は、ここで驚きに遭遇する。な、な、なんと、まだ1キロ以上はあろうかというのに、かんさんとゴンちゃんが応援に駆けつけてくれたのだ。かんさんはタイガさんの激励に行ったのかコースを逆走していった。ゴンちゃんは私の横を伴走してくれ、「大股は消耗するから細かいリズムで走ろう!」「手を大きく振って!」…と、ゴール至近まで終始励ましてくれた。 なんて私は幸せなんだろう。なんて御礼を言えばいいんだろう。感むせぶ心境あるも、声が出ない。別段、故障はなかった。心臓も大丈夫だった。ただ、ただ脚だけがもの凄く重くて声が出なかった。明らかに脚のみからくる苦痛。これほどまでに風に打ちのめされたのは初めての経験だった。
 ゴンちゃんは、「リュウさん。(ゴールがある)公園に入るとき、チアとハイタッチね」と言って去った。「走り屋のメンバーが来たら、ハイタッチお願いね」と打ち合わせ済みらしい。しばらく走ると、公園の入り口にさしかかりチアリーダーの高校生を発見した。しかし、私はもうゴールまで脚を運ぶことしか考えてなかった。一寸の余裕もなかった。(とはいえ、チアだけはしっかり確認していたのはなぜか?いまでも不明…)
 結局、ハイタッチもできず、最後のトラック半周。渾身の力を振りしぼり2、3人抜いたが、最後の直線で凄いスピードの若いランナーにビュンッと抜かれた。あのスパートは羨ましかった。かくして、レースは終わった。
(番外編へつづく)


大凧走録4(番外編)

 ひとまず走り終えることができた。今日は歩かなかっただけでも収穫といえるほどのバテ状態だった。こんなに苦しい展開だったのに、走り終えると程なく、参加して良かった、また走りたいなあと思うのはなぜか。まだレース経験は浅いが、1レースごとに学ぶものがたくさんある。自分自身の知らなかった性質もよくわかる。コース特性、自然環境と自らのコンディションの組み合わせはその都度異なる。それがたまらなく面白い。今回は「序盤のペース」「風」について多く学習した。体が大きい分、風の抵抗も受けやすいのでダイエットをしようと決心した。
 ゴンちゃん一家がいる走り屋待機エリアに戻る。しばらくして、タイガさんがトラックに入ってきた。皆で声援を送る。辛そうなラスト・ランだ。怪我が悪化しなければいいが…。
タイガさんが戻ってきた。なんとか大丈夫そうだ。かんさんからビアードパパのシュークリームをご馳走になる。これがうまいの何のって!もう言葉では言い表せないうまさ!レースが辛かった分だけうまかったという感じ。ほんとに今まで食べた菓子の中で一番うまかった。かんさん一家の皆さん、ご馳走様!
 着替えを終えて、タイガさんと抽選会に行く。「ああっ!」。タイガさんがライオン丸を発見した。(お待たせしました!)抽選会場に茶髪をなびかすライオン丸がいた。すでにサンバイザーもしてなく、我々は正面からまともに遭遇してしまった。えらいオバちゃんだ。そう言えば、高校生のときに行きつけの喫茶店に「バック美人」というあだ名のウェイトレスがいた。その人は腰まではあろうかという日本人形のような黒髪をなびかせていた。そのスレンダーな後姿には誰もが一度は憧れた。ところが、振り向くと真っ白なファンデーションにべったりアイシャドウの度派手なオバちゃんなのだ。これが面白くて一見の友達を次から次へと連れて行って、「オエ〜ッ」とか「五輪真弓だ〜っ」とか言うのを聞いて楽しんだことを思い出した。
 余談(ライオン丸の話自体がすでに余談?)はさておき、ライオン丸は抽選会場で手に大きい凧を持っていた。お土産かな?と思ったら、タイガさんが「あれは優勝記念品だよ。あの人、10キロ50歳以上で優勝したんだよ」と言っていた。私は驚いた。これは、見かけによらず1位なのか、見かけどおり1位なのかどっちか。まあ、そんなことはどうでもいいか。それにしても驚いた。皆さんがライオン丸に出会う日もそう遠くはないだろう。(走り屋に入ってきたら、こんなこと書いた私は地獄行き決定!?)
大凧走録これにて終了。