リュウさんのレース完走記その9 
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         草津合宿録         2002年7月27日・28日
草津合宿録@(サイクリング道を快適に走る)

第1回 走り屋夏合宿(草津温泉)
参加会員 ナポ店長、かんさん、ゴンちゃん、タイガさん、アキさん、ボクロンさん、HIKOさん、リュウ。
参加会員家族 大ちゃん、かん夫人・あずぴょん、ゴン夫人・はーちゃん・コウ君・ほのちゃん、リョウ君。
現地には午後1時過ぎに到着。あれやこれやと準備を整え、午後1時40分過ぎに草津温泉街外れの別荘を出発。来る途中に「道の駅」で入手したハイキングガイド片手にかんさんがコースメイク。まずは温泉街北にあるテルメテルメまで公道を走る。別荘から出るといきなりの下り坂だが、皆の足取りは軽い。まだ見ぬコースに期待が高まる。テルメテルメに向かって、今度は上り坂。アキさんのご子息リョウ君も元気についてくる。何となく腹がごろごろしてきた。いつも走り出すと腸が活性化する。思わずボワッとやってしまった。ゴンちゃんの奏でるプップッというサブスリー・バージョンの走りっ○のように上手に演奏できない。まだまだ修行が足りないようだ。さて、テルメテルメからはサイクリング道だ。この道に入ると同じに木陰となり、ひんやりと心地良い。森林浴とばかり草の萌える香りが強くなる。車も来ないので本当に走りやすい。皆思わず「ああ、いいなあ」「気持ちいいなあ」と森林走を満喫している。このとき、皆はまだ、このあと訪れる地獄走のことはまったく頭になかった。


草津合宿録A(地獄の特訓はじまる)

別荘を出てから3、4キロは走っただろうか、短いサイクリング道路も終わり再び公道に出た。道向かいには自然遊歩道の入り口がある(実は、ここが芳ケ平登山口だとは誰も知らなかった)。かんさんから簡単なブリーフィングがあり、これから芳が平へ向かう旨が発表された。皆やる気マンマンだ。エイエイ、オーとばかり、全員が遊歩道に飛び込んでいく。この先に○○が待っていようとは…。
さて、このハイキングルートはいきなりの勾配だ。サイクリング道とは打って変わって悪路であった。
それでも、まあこんなもんかと皆は甘くみていた。「そのうち平地や下りも出てくるだろうから、それまではがまんして上ろう」、皆がそんな軽い気持ちだったに違いない。イチ、ニ、イチ、ニとそれぞれが自分のリズムで山道を上る。歩く暇など全然ない。歩いたらおいていかれてしまうのだ。足元に神経を使う。下手をすれば足をくじいて戦線離脱となるため、「前を見て姿勢良く」なんて当初考えていたとおりにはいかなかった。ハァ、ハァと息が荒くなり、脚が辛くなってくると、かんさんやゴンちゃんが絶妙のタイミングで小休止をとってくれた。大体が遊歩道の分かれ道での小休止で、これはメンバーの迷子防止のためにとった策でもあった。ところどころ分岐点のようなブレイクポイントが全然なく苦しい箇所もあった。
道はだんだんと険しくなる。V字に切れ込んだ山道をぴょんぴょん跳ねながら走る。子供の頃よくやった「ケン・ケン・パ」の要領で、不整地を駈ける。私は後方を走った。すぐ後にHIKOさんがいた。HIKOさんとは良きライバル。このときもHIKOさんの足音を聞きながら前を走っていた。突然、腹がぐるぐると鳴り出す。背に腹は変えられず、心の中でHIKOさんに詫びて屁をぶっ放してしまった。その直後、HIKOさんの足音が聞こえなくなったので振り向くと、HIKOさんは苦しい顔で失速していた。「ああ、悪いことしちゃったなあ」と思いながら黙々と走っていると、またスタスタと元気なHIKOさんの足音が聞こえてきた。2人でかなりの距離を駈け、小休止となった。


草津合宿録B(地獄の特訓・いつまで続く)

さて、小休止をとる度に中盤の発走順が変わる。基本的に、かんさんが先頭を行き、続いてゴンちゃん、そして、ボクロン、リュウ、HIKO、タイガが入れ替わり、ナポ店長がトリを務める展開。店長はいつも休憩ポイントに到着するやいなや、はい出発という感じで大変そうだ。この特訓、早く上がればそれだけ休めるという歩合制というかボーナス形式である。後から駆け上がる者にはきつい試練だ。それでも誰一人弱音は吐かない。皆、疲れているにもかかわらず「いいねえ!」とか「涼しくなってきたね」とか前向きだ。正直、皆きつかった。だが、こういうときにチームワークで「辛さを泳がす」ことができるのだと知る。一人ではきっとできない。皆、口々にそう言っていた。
上り中盤より、私はタイガさんの後ろを走った。タイガさんはサロマ以来、脚の故障が続いている。走っては歩き、歩いては走っている。その姿から、痛みはかなりきつそうだが一言も弱音を吐かない。すごい先輩だなあとつくづく思う。時に遅々として進まない区間もあった。心の中でタイガさんの完走を願いながら、時折「ファイト!」と声を出す。先輩に失礼かとは思ったが、そうすること以外私には何もできなかった。そんなとき、ある走法を発見した。「そうだ、このペースでLSDをやろう」。タイガさんが走ったり歩いたりしている後で、私は走り続けてみよう。足踏みを続け、歩かないでついていくことができるだろうか。歩いたほうが楽だが、自分に課題を与えてみた。数キロこれを続けられたことは自信につながった。「どういう環境下でも工夫をして臨む」、これも合宿から得た収穫であった。


草津合宿録C(地獄の特訓・ヒュッテまで)

1時間ぐらい進んだところで、右手に「常布の滝」が見えた。こんな景色を自分の脚で手に入れたなんて初めてだ。本当に清清しい気持ちで、山の空気を思いきり吸い込む。だんだんと涼しさが増し、標高も上がってきたことは景色でもわかる。雄大な眺め。誰かが言った。「あれが草津の町だよ」。見ると、本当に遠く眼下に街並が見える。「さあ、もうちょっとで芳が平だ。がんばろう」。かんさんが走り出した。かんさんは帽子も被らず、水もあまり飲まない。私のようにドロドロ汗もかかない。まったく同じ人間に生まれたのに、どうしてこうも違うのだ。私はすでに汗びっちょり。ランパンからも滴がしたたり落ちるほどだ。タッ、タッ、タッ。ハの字に脚を開きくぼみを避けて走る。時折、石段や木でできた段がある。丸木橋を慎重に渡る。清水が流れ出しているところをまたぐ。「あっ」。単に濡れた路面と思ったら、ずぶっと左足が沈んで靴の中まで浸水してしまう。普段ならイヤな感じがするのだが、その冷たい清水に心地良ささえ感じる。両側の熊笹が行く手を阻む。ガッサガッサと笹の葉をかき分けながら走る。張り出した枝を屈んでよける。往路最後の休憩は芳が平1キロ手前であった。あと1キロということで、皆も最後の踏ん張りどころと知る。私は、賭けをした。かんさんが走り出した後、すかさず後を追った。当然、後にはゴンちゃん。この構図が、私の「賭け」だった。だんだんと涼しくはなってきているが、芳が平が近づくに連れ、頭上を覆う木陰はなくなった。燦燦と降り注ぐ太陽は、標高が増すほどギラギラしている。「気温は涼しいが陽射しが暑い」という高原独特の気候だ。快調に上った。そろそろゴールかと思ったが、「芳が平500m」との標示が…。「あれ、まだ500も」。山道は前へ進んでいるようでなかなか距離が稼げない。かんさんのスピードは変わらない。私はといえば、ゴンちゃんに後ろをぴったりとつけられ、失速気味だ。ハアハアと息が荒くなる。空気が薄くなってきたからではない。それは、明らかにオーバーペースからくる苦しさだった。しばらくはがまんした。が、残り300mあたりで、ついに「ゴンちゃん、前を行って…」と言ってしまう。富里10Kの時と同様、弱音を吐いてしまった。「だめだよ。何言ってんだよ」とゴンちゃん。「げ〜っ」。やっぱりダメかあ〜。すかさず「誰がこの合宿企画したんだよ」とゴンちゃん。もう、グウの音も出なかった。そうである、この合宿は私が言い出しっぺなのである。もう後にひけなかった。「わかったよ。最後までやるよ!」。大きい声で叫んだら、ゴンちゃんは爆笑していた。ラストは木で組んだ段が続いた。幅が中途半端で上りづらいことこの上なかった。あとちょっとというところで、ゴンちゃんがすうっと横をすり抜けて前へ出て行った。「あああ、やっぱりついて行けなかったかあ」と一瞬思うが、それにも勝る爽快感があった。ヒュッテが前方に見えた。清水が流れる丸木橋を渡って、折り返し地点の「芳が平ヒュッテ」に到着した。


草津合宿録D(地獄の特訓・ヒュッテにて)

草津合宿録D(地獄の特訓・ヒュッテにて)
芳が平ヒュッテは小さな山小屋だ。風は涼しく空気も新鮮、下界の眺めも最高だ。到着した順に辺りをうろうろする。私はどこかに水がないかと探しまわる。すかさず、「こういうところは水はないよ」とかんさん。「僕はあまり飲まないから、あげるよ」とかんさんはリュックの中から水を取りだし、私にくれた。やはり、トップアスリートは違う。私はレースの時も水を補給することを楽しみに走っているような男だから格好悪い。ゴンちゃんも「リュウさん、水ないってば」と言っている。山小屋の入口にはコーヒー××円…とメニューがある。なかは喫茶店になっているようだ。登山者風のおじさんが、口ひげを蓄えた山小屋のオーナーらしき人と談笑している。きちんと長袖長ズボン、登山靴で来るのが礼儀のような気がする。明らかに我々は場違いな雰囲気だ。いわゆる「浮いている」ってやつだ。この登山道を走って上がってくる人はあまりいないはず。足はくじくし、崖道も走る。とにかく足場が悪い。おまけに、草で脚がかぶれてかゆくなる。一般のランナーは敬遠するだろう。さて、何はともあれ「水」だ。水がほしい。私は苦肉の策に出た。「すみません。水を売ってください」。ヒュッテのオーナーは明るい声で「差し上げますよ」と答えてくれた。我々はトイレにひいてある岩清水を自らの給水ボトルに補給し、トイレ入口のアクリルケースに小銭を入れた。冷たくて旨い水だった。山小屋から顔を出すオーナーに各々が御礼を言い、ヒュッテを後にした。ゴンちゃんが真っ先に沢に向かう。先ほど渡った丸木橋の脇を降り、沢の水で顔を洗う。水が冷たく、気持ちがいい。あまりに気持ちがいいので、汗でびしょ濡れのランシャツを洗ってしまった。これを着たときに冷たくて気持ちがいいの何のって!さらに冷たくした帽子も被っていざ出発。我々一行はいま来た道を一斉に下りはじめた。


草津合宿録E(地獄の特訓・いよいよ下り)

下りは、ナポ店長が先頭を走った。今度はヒョイヒョイと岩場を避けて下る。これもまた注意が必要。気を抜けば、転がり落ちてしまうし、下手をすれば崖下へ転落することも考えられる。改めて、上ってきた道を見ると結構な坂である。みな「良く登ってきたよな」「一人じゃ上れなかったよね」と口々に語る。私自身、ここまでほとんど休むことなく一気に上って来れたのはチーム力だと実感していた。それだけに、こうして無事皆で折り返せた喜びをかみしめていた。この暑さと勾配、足場の悪さは、とても一人では気持ちが続かない。芳が平ヒュッテのオーナーとの出会い、冷たい水を飲めたこと、その一つ一つが頑張ってきたからこそ与えられた褒美と感じる。やはり、こつこつ何かをやっているといいことがついてくる、そんなことを体で味わった気がした。さて、下りランは意外にも店長の独壇場となった。とにかく速い速い。スタコラサッサとばかり悪路を身軽に駆け下りて行く。誰かが言った。「店長、子供のころ山道で遊びまわっていたらしいよ。坂道は慣れているらしいんだ」。その言葉どおり、ただ者ならぬ脚使いでトットコ下りる。誰もついていけない。私たちは呑気に下る。上りとは違い、いろいろおしゃべりを楽しみながら、脚を進める。「なんか、暑くなってきたなあ」。気がつけば、我々は八百mの標高差を一気に駆け上っていた。それを一気に休まず下ってみると、気温の差が歴然だった。最初のうちは涼しい高原の風、次第に湿度が上がりムッとしてくる。さらに暑さが加わり、いわゆる日本の夏に戻って行った。あまりに急激に下りたので、耳がツンとする。すかさず耳抜きをする。風を切って走っていたら、40分程度で山道は終わってしまった。本当にあっという間であった。
行きとは違う舗装道を帰ろうということになった。いきなり、路面に大岩石が落ちて行く手を阻んでいる。先日の台風の落石と思われる。この道は通行止めになっている。その落石の横を恐る恐る小走りに通過する。上を見ると、今にも落石がありそうな岩盤が露出している。落石はそこここにあり、舗装路は岩や砂利だらけだった。しばしジョグを楽しみながら舗装路を行く。皆、今日のヤマは越えたなあという充実感があった。ゴンちゃんが立ち止まり、道路に突き出した小枝を手にした。その枝には赤い粒粒がたくさんついていた。「クワの実だよ」。ゴンちゃんが赤い実を食べた。ラズベリーのような実を口にしてみると、甘酸っぱい爽やかな味がした。


草津合宿録F(地獄の特訓・これにて終了)

草津天狗山スキー場リフト乗場脇の公道に出た。ここから草津温泉街中心部の湯畑(ゆばたけ)までは、走れば10分ほどだ。自動車が行き交う一般道は危ないので、一列になって走る。かんさん、ゴンちゃんを先頭に湯畑まで走る。このあたりにくると、もうかなり蒸し暑い。それでも標高は1000mだから埼玉よりはずっと涼しいのだが…。下り道路をタッタカ走ったら、すぐに湯畑に着いてしまった。ここは観光客ばかり。おばちゃん連中、カップル、浴衣のオッサン、皆それぞれに草津観光を満喫している。ここでも我々は異色集団。周囲の人はみな、何で温泉街のど真ん中でスポーツ姿なんだ?という顔してこちらを見ている。我々は、そんなことお構いなし。合宿一日目の登山ランから戻った充実感に酔いしれていた。ここから、悪巧みがはじまった。「饅頭屋の通りを通って帰ろうか」。「うん、それがいい」。全員一致で、最も人通りが激しい饅頭屋の通りを抜けて別荘に戻ることにした。この道は、饅頭屋が販売合戦を繰り広げている。行き交う観光客は、ふかしたての温泉饅頭が試食できるのだ。「よし、エイドで給饅頭だ!(我々の世界の専門用語です)」。こんな出で立ちの我々に饅頭を食わせてくれるか不安だったが、ひとまずジョグをやめ、歩いて通りに入った。すると、40cm四方のバットにきれいに並べた饅頭(確か4×4で16個)を片手に持ったおっちゃん、おばちゃんが、次から次へと饅頭をくれるではないか。うれしい〜っ。さらに、店によってはお茶まで支給してくれる。これは、ありがたい。あつあつの饅頭を一口かじる。走った後の甘いあんこは最高に旨い。思わず「うまいなあ、これ!」と叫ぶ。配るおじさん、おばさんも「ありがとう!」と喜ぶ。我々にしてみれば、その饅頭屋の饅頭がうまかったというより、あの登山をやった後に食った甘いものが旨かったというのが本音で、おそらく誰も味わってはいなかったと思う(ごめんね、饅頭屋さん)。とはいえ、我々が旨そうに饅頭を食ってうなる姿は、饅頭屋さんにとってはまんざらでもなかったようだ。
さあ、別荘まで最後のひとっ走りだ。かんさんが行く。ゴンちゃんが続く。すかさず、皆で追う。最後の1キロぐらいを1列で走る。もうすぐ練習も終わりとあって、ペースはだんだんと速くなる。かんさんがどんどんスピードを出し、ゴンちゃんが追う。このシーンはどこかで見たことがある。そうだ、流山練習会だ。あの時、私は2人を追走しようとしてすぐに失速した。「よし、またついていってみよう」と思い立ったが、ちょっと走っただけですでに2人の背中は小さくなっていた。この後、私は自分なりのラストスパートを試みた。さきほどから何だか後に人の気配を感じる。振り向くと、ぴったりとHIKOさんがついてきている。2人で全速スパートで別荘を目指す。パチンコ屋の角を右折すれば、あとは300mだ。が、このラスト300は、どえらい上り坂だ。ぜえぜえしながら上る。かんさん、ゴンちゃんの姿はすでに見えない。「きついな、この坂ぁ〜!」、HIKOさんが叫ぶ。大きく手を振りながら、2人でこの坂を上りきり、ゴールの白根山荘に辿りついた。皆それぞれのラストスパートで急な坂を上りきり、1日目の練習は終了となった。
本当に楽しいラン(登山走?)だった。走りきった皆の爽やかな汗と笑顔が、とても印象的だった。